縁もゆかりもない街で「営業しなくても売れる」アイスクリーム会社を54歳で起業したNaomi Posnerさんにインタビュー

Mami’s Gelato。誰もが美味しい植物性アイスを作ることができる魔法のようなミックスを販売する米国の会社です。2015年に開業し、たった4年で全米45州、世界6か国の500店舗以上に販売網を広げ、売り上げは5年間で4000%増。今や国内外の複数箇所に生産拠点を持っています。


そのミックスの開発者でありMami’s Gelatoの社長Naomi Posnerさんに、アイスクリーム について、そして起業家精神についてインタビューしました。





アイスクリームについて


娘3人と移り住んだ縁もゆかりもない街でスタート


道子:Naomiさんは娘さんの進学先だったインディアナ州に一緒に移り住み、そこでビジネスを始めたそうですが、アイスクリームビジネスを始めたきっかけは何ですか?


Naomi: 私たちの家の近所にとてもお気に入りのベジタリアンレストランがあったのですが、ある日廃業すると聞きました。あまりに残念でもったいないと思い経営権を買うことにしたのです。


ところがいざ運営を始めてみると料理は美味しいのに、それに合うベジタリアンのデザートが無いことに気づきました。そこで自宅の台所でココナッツを使ったアイスクリームを作るようになりました。


やがてそのアイスクリームは人気メニューとなり、スタッフにも作り方を伝授しようとしたところ、工程が複雑でうまく再現することができませんでした。そこで、誰でも同じ味を作ることができるミックスを作ることにしたのです。ミックスでアイスクリームを作り始めて数ヶ月後、他店に卸販売するビジネスを思いつきました。





ココナッツとアーモンドを丸ごと使用


道子:他社が販売するアイスクリームミックスとの違いは?


Naomi: まず弊社のミックスは植物性(ビーガン)で粉状です。一方、市場に出回っているほとんどのアイスクリームミックスは牛乳由来で液体です。


また、弊社のミックスは通常の植物性アイスクリームと比較して脂肪分が多いので、乳製品由来のアイスクリームと同様の質感、リッチさ、満足感を提供できます。


そして一番の特徴は、ココナッツやアーモンド全体をそのまま使用している点です。一般的なビーガンアイスの多くは、ココナッツミルクやアーモンドの果汁やエッセンスのみを使用していますが、弊社の商品は果実全体を使用しているんです。



             *販促物のイラストは娘さんが担当



成功の秘訣はお客様との信頼関係


道子:全米で500店舗以上の顧客を持っているそうですが、なぜ多くの店舗があなたのミックスを選ぶのでしょうか?   


Naomi: 販売当初は他に植物性アイスクリームミックスが存在しませんでした。しかし今では複数の企業が同様の商品を販売しています。それでも私たちの商品が売れ続けるたくさんの理由の一つは、お客様が私たちの商品だけでなく、私たちの会社そのもののファンになってくださっているからだと思います。


私たちのお客様の多くがインフルエンサーとなり、積極的に私たちの商品を推奨してくれています。彼/彼女たちの存在が新たな顧客獲得につながっています。


道子:なぜ多くの顧客がリピーターとなっているのでしょうか。


Naomi: 私たちのようなB to Bのビジネスにおいては、顧客との関係性が非常に重要です。私たちはお客様を理解することを大事にし、丁寧なコミュニケーションを心がけています。そのようなプロセスを経て構築された関係性は他者によって置き換えられることはありません。


弊社には5年間の販売実績があり、業界では植物性アイスクリームミックスのエキスパートとして認識されています。お客様は、業界ナンバー1の私たちの商品に対して安心感を抱いてくださっているのだと思います。






         *インフルエンサーのインスタはこちら



ビーガンアイス市場とMami’s Gelatoの未来


道子:植物性アイスクリーム市場の今後をどのように予測しますか?


Naomi: 複数の業界分析結果によると、この業界は今後も伸び続けます。信頼できるデータがそのことを明確に示しています。


道子:Mami’s Gelatoは10年後どのようになっていると思いますか?


Naomi: 商品を世界中に届けていたいです。また今後、マカデミアナッツやカシューナッツなど、豊富な種類のアイスクリームやソフトクリームミックスを販売予定です。過去に製造していたカフェラテやタピオカミルクのミックスも復活させようと考えています。


そしてお客様が私たちの商品を全て試すことができるアイスクリームショップを複数店舗運営できれば。その頃には現役を退き、他の人にビジネスを任せたいですね。


             アイスクリームの平均成長率



起業家精神について


「頭の中がぐちゃぐちゃ」で大学院へ


道子:54歳でビジネスを始めるまではどのような生活を送っていましたか?


Naomi: 日本に14年間住んでいました。ITエンジニアとして働いた後3人の娘を授かり主婦をしていました。でもその生活があまりに退屈で、頭の中もぐちゃぐちゃで、知的な挑戦を渇望していた時にジャパン・タイムズでシカゴ大学東京校の広告を見つけすぐに応募しました。結局は娘3人を連れてシカゴに移り住み、キャンパスに通いながら修士号(哲学)を取得しました。私の人生の中でかけがえのない時間です。


道子:娘さんたちの反応は?


Naomi: 母親が目標に向かって努力する例を見せる良い機会だったと思います。ビジネスを始めることになった時も、すぐに手伝いを申し出てくれました。今でも娘たちは頼れる存在です。


哲学の学びがもたらした変化


道子:大学院に通うことで人生に変化はありましたか?


Naomi: はい。物事の捉え方や考え方がすっかり変わりました。思考と感情を切り離すことが容易になり、問題解決のために、自分のマインド、思い込み、先入観を見極めながら課題を分析できるようになりました。


道子:大学院での学びをビジネスに応用していますか?


Naomi: あらゆる場面で活用していると思います。私は哲学を学んだので、他の技能的な学び(例えば会計学とか)のように、活用例が明確ではないのですが、例えば常に「 Why?」と問いかけています。そして、問題の根幹をメタレベルで捉えるようにしています。


例えば、今回の新型コロナウィルスの問題を例に挙げると、ただキャッシュフローや運転資金のことだけを考えたりはしません。この事態は自分、国、そして世界にとってどんな意味があるのか、倫理的な側面について考えます。





頭の中にはいつも新しいビジネスアイデア


道子:そもそも、なぜビジネスを始めようと思ったのですか?


Naomi: 実は子どもの頃から既に小さなビジネスを始めていました。手作りのステッカーを友人に販売していました。確か7歳か8歳の頃です(笑)。


成人後の最初のビジネスは、実は今と同じアイスクリーム屋で、当時は大学生でした。住んでいた街にアイスクリーム屋が1件も存在しなかったので、だったら自分で作ってしまおうと考えたのです。


おそらく何か課題を見つけたら解決のために行動する性質が元来備わっていたのだと思います。理由はわかりませんが、起業家的な考え方を持って生まれてきたような気がしています。私の頭の中にはいつも新しいビジネスアイデアが生まれてきて、それを止めることは不可能とも言えるほどなのです。笑


「これまでは放っておいても勝手に売れる状態でした」


道子:新しいアイデアはどのようにひらめきますか?


Naomi: 常に市場の動向をチェックしながら考える毎日ですが、正直アイデアを思いつくことは実現することに比べると難しくはありません。今現在新しい商品のアイデアが5つあり、実現に向けてこれから順番に着手していくところです。 商品アイデアだけでなく、新しいマーケティングのアイデアも必要です。


実はこれまで、放っておいても売れる状況が続いてきたため、ほとんど営業もマーケティングは手付かずでした。でもそろそろ始めなければと思っています。


新しいアイデアを得るためには、みんなでブレインストーミングを行い、外部からの意見も積極的に受け入れることです。この方法はだいたいうまくいきます。


道子:仕事で一番楽しいと思うことは?


Naomi: この仕事をしていなければ決して出会うことのなかった人々に会い、新しい場所に行けることです。本当に素晴らしい機会に恵まれています。 でも一番満たされる瞬間はお客様からの喜びの声を聞く時です。そして、そのようなビジネスが実際利益につながっていると言う点です。自分自身に給与を支払うことができるなんて、思ってもみませんでした。




社員4名は国内外でリモートワーク


道子:Naomiさんの典型的な1日を教えてください。


Naomi: 弊社には従業員が4名おり、全員リモートワークです。以前はオフィスを持っていましたが、場所がなくても仕事ができることが分かり、今では海外で働いている人もいます。ですから、だいたいパソコンの前に座って、従業員や取引先とやり取りしていることが多いです。私は朝方人間なので、朝6時から2時頃まで仕事をし、それ以降は家事をしたり、家族と過ごします。


道子:困難に直面した時、どのように乗り越えますか?


Naomi: 困難の種類にもよりますが、乗り越えるに値しないものもあります。その場合は方向性を変えます。


例えば、開業当初は牛乳由来のミックスも製造していました。しかし取り扱いに非常に手間がかかり、植物性のミックスには存在しない問題が多くありました。そこで問題を乗り越えるのはやめ、製造中止を決めました。その他の障壁に関しては、みんなんでとにかく話し合い、解決のための計画を立て、前に進むだけです。


感謝の習慣であらゆるものを乗り越えてきた


道子:一番恐れていることは何ですか?恐れをどのようにコントロールしますかか?


Naomi: 多くの人は私のことを「怖いもの知らず」と言います。当たっているかもしれません。でも、ビジネスに関しては、私はかなりのリスク回避型で、リスクを見極めないまま物事に飛びつくことはありません。決定した事柄に迷いを感じることなく眠りにつくことができて、初めて「大丈夫だ」と実感します。


私生活においては、何が起きてもそれは自分にとって最善だと信じることができる心の習慣を実践しています。感謝して物事を受け入れることです。そうすることがすべてにおいて私たちを導いてくれます。これまでの人生で、この習慣を実践することで、あらゆる不安や障壁を乗り越えてきました。




ビジネスはアート


道子:今から何かを始めたいと考えている人へのアドバイスを


Naomi: 起業するには、自分自身を知ることが重要です。自分の価値観と求めていることを知ることです。ビジネスを始めることは創造的なプロセスであり、あなたはその中心にいます。科学よりもアートに近いと思います。


日々、一瞬一瞬、自分に対して誠実であることを心がけ、自分の信念やエネルギーを活用するのです。そうすることで、他社と同じ商品やサービスを販売していたとしても、あなたの会社は独自のものになります。自信を持って、自分を信頼し、ビジネスの成長のために日々やるべきことに取り組むことです。


不安な時は最悪な事態を想定


道子: 最後にパンデミックの状況下にある日本の皆さんへのメッセージをお願いします。


Naomi: 心配は何も生みません。時間の無駄でしかありません。ですから心配している自分に気づいたら立ち止まり、行動を起こしましょう。友達に電話したり、お皿を洗ったり、どんな小さなことでも意味があります。


私は今回のウィルスを成長の機会を与えてくれるギフトだと捉えています。マイナスに見えることには、良いこともあります。その良いことに焦点を当てて感謝の気持ちを抱くのです。家族と過ごす時間が以前より増えたと思います。人生の長期プランを立てることができているかもしれません。それらに感謝しています。


もし不安が押し寄せてきたら、恐れに真っ向から向き合い、起こり得る最悪の状況を想像してみてください。そしてそれが起こったと仮定して自分自身に対処できるかどうか尋ねます。例えば、会社が倒産し、家を失った状況を思い浮かべてください。何を感じますか?それでも何とかなるという気持ちが湧いてくるのではないでしょうか。


人には回復力があり、苦難を乗り越え、成長し続ける方法を見出す力が備わっているのです。




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