FRESH! サイエンス スクリーンの前で過ごす時間が子どもたちのソーシャルスキルに与える影響。実はあまり心配なかった。


コロナ禍で、若者や子どもたちがネットに入り浸っているのではないかと心配する一方で、いろいろな方法でクリエイティブに見知らぬ人とつながり、新しい関係を構築したり、第3者に発信したりする若者たちの行動力にこちらが元気づけられたりもします。

子どもたちのデジタル機器との付き合い方をどうすればいいのか。ネットに頼らざるを得ない状況の中、親のコントロールは普段以上に困難で、不安を抱えている親御さんも多いかもしれません。そんな親御さんが少し安心できそうな、スクリーンで過ごす時間と子どもたちのソーシャルスキル(他者と良い関係を築き、社会に適応するための力)の関係性について調べた、米国の最新の研究結果をご紹介。




まず、本研究チームのリーダーであるオハイオ州立大学のDouglas Downey氏がこの研究に着手しようと考えたきっかけについてご紹介すると、それは、ピザレストランでの息子さんとのやりとりでした。

「お前たちの世代はスクリーンばっかり見てるからソーシャルスキルが欠如してるんだ」。

と諭すDowney氏に、息子さんが尋ねました。

「何か証拠でもあるの?」。

そこで社会学者であるDowney氏が過去の研究を洗い出してみたところ、根拠と言えるような研究は見つからず・・・。 じゃあ、ということで、Downey氏は1998年に開始された、子どもたち(19,150人)の社会的スキルについて幼稚園入園時から5年生まで調査した研究に着目。仲間と共に2010年より同様の調査を13,400人の子どもたちを対象に実施し、比較することにしました。

1998年はまだFacebookが現れる6年前で、2010年はiPad発売開始の年。その3年前にはiPhoneが発売されており、そういう意味で、後者のグループは「デジタルネイティブ」と言える世代。前者よりスクリーンの前で過ごしてきた時間が圧倒的に長くなっています。

では、「SNS前」世代と「デジタルネイティブ」世代のソーシャルスキルにはどのような違いがあったのでしょう。

それぞれのグループの親と教員達が定期的に行った診断結果を比較したところ、「SNS前」世代と「デジタルネイティブ」世代のソーシャルスキルに差はありませんでした。

むしろ、対人関係と自己統制に関わるスキルは「デジタルネイティブ」世代の方が若干高くなっていたのです。同じグループ内の最もスクリーンの前で過ごす時間が長い子どもと、最も短い子どもを比較しても同じ結果が得られました。

ただ、例外として、オンラインゲームとSNSへのアクセス頻度が高い子どものソーシャルスキルは、そうでない子どものそれよりほんの少しだけ低くなっていたとのこと。

Downey氏は、「おそらく新しい世代は、良い関係性を構築することとは、オンラインでも対面でも良いコミュニケーションが取れることだと理解しているのだろう」と述べています。




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この研究では、「良い関係性」とか「良いコミュニケーション」と聞いて、見えない相手とのそれを思い浮かべることが難しい私たち親世代には想像が及ばない能力を、子どもたちは培っている可能性が示されました。

例えば、単純な「画面を見る」という行動の内側では、見えない相手を想像し、適切なタイミングや体裁で文字を送る練習が行われていたり、表示される一連の写真から発信されるメッセージのパターンを読み取る力等が日々磨かれている可能性があります。。

いずれにしろ、文字、言語、手紙、電話など、用いる手段や道具は変わっても、人は人を求めて、適切で効果的な関わり方を身につけていくものなんですね。


出典:Douglas B. Downey, Benjamin G. Gibbs.Kids These Days: Are Face-to-Face Social Skills among American Children Declining?American Journal of Sociology, 2020; 125 (4): 1030 DOI:10.1086/707985

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