FRESH! サイエンス 自然体験と幸福感の関係性 〜AIによるSNS投稿写真分析結果より〜

感染症の影響で、週末は人混みを避けて自然の中で過ごす人が増えているというニュースを目にしました。キャンプ場も人気だそうです。





我が家の近くにも小さな山がありますが、最近は朝早くから小中高生が散歩やマラソンをしています。


さて、「自然ってやっぱりいいよね〜」「空気が美味しいね」などの意見に異を唱える人はいないと思うのですが、実のところ自然が人にもたらす恩恵の程度やそのメカニズムなどについてはまだまだ明らかにされていません。


そこでシンガポール国立大学の研究チームが目を向けたのがSNSの投稿写真です。


彼らはSNSに投稿されている185か国からの31,500点の写真にアクセスし、AIを用いることで、これまで把握することができなかった世界中の人々の日々の自然体験と肯定的な感情との関係性を分析しました。


まず、明らかになったのは


# fun

# vacateon

# honeymoon


などのタグを付けているグループと


# daily

# routines


など、「日常」に関わる言葉をタグ付けしているグループの投稿を比較した場合、前者の投稿の方が、植物、水、景色など、自然を捉えた写真を多く含んでいたそうです。


また、# funなどのタグと共に自然の写真を投稿している人が多く住む国(例えばコスタリカやフィンランド)は、2019年度の世界幸福度ランキングで高い順位に位置していることも明らかになりました。


本研究チームのCarrasco准教授は、自然によってもたらされる私たち人間の文化や社会への価値について指摘し、経済活動の重視によって自然が失われていることに懸念を示しています。


一方でCarrasco准教授は、


「次のステップは自然が私たちに人間にどのように作用し、満足感をもたらしているかを明らかにすることだ」


とも述べています。





そう、この研究では自然と人の幸福感の因果関係を明らかにはしていません。





ですからこの投稿を読みながら


「生活にも気持ちにも余裕があるから自然に目を向けられるんじゃない?」


と考えた人も多いと思います。




そこで、自然が幸福感をもたらす仕組みについて言及している記事を探してみました。


それによると、近年、自然が脳の疲れを回復させるだけでなく、注意力を高めること、また畏敬、充足感、高揚感などのポジティブ感情を高めることが明らかになっているそうです。


このポジティブ感情が私たちにもたらす効果について説明したものに、Barbara Fredrickson博士の有名な「拡張・形成理論」(2001)があります。


この理論によると、ポジティブ感情は、私たちの思考と行動のレパートリーを拡げ、レジリエンス(回復力)を高め、心の幅を広げることで様々な活動への関与をより豊かなものにし、より良い状態への発展スパイラルを引き起こします。そしてこれらの効果は長期に渡ります。


つまり自然体験によって、良い気分になるというだけでなく、人との関わりや活動(仕事や学習)のパフォーマンス、そして創造性も高まり、結果持続的な幸福感や充足感がもたらされると結論づけることが可能なのです。


心理学者でありアドベンチャーガイドのCordele Glass氏は、まだまだ謎の多い自然が人間にもたらす効果のメカニズムについて、「フロー」を用いた説明を試みています。


「フロー」とは。


それは、高次の意識状態で、スポーツの分野では「ゾーンに入った状態」と呼ばれます。時間も忘れて没頭しているような、忘我状態です。


「あれ?!もうこんな時間!」ってなってしまった経験を思い出してください。もしくはバッターボックスでボールが止まって見えたプレーとか。





そのフローを生む要素が、どうも原始的な自然環境の中にはたくさん存在しているようなのです。時間感覚の歪みや、そのもの自体の本質的価値です。


例えばフローを起こす活動はそれ自体が純然たる喜びであり、外的報酬を主たる目的としたものではありません。


自然そのものも、何かを目指してそこに存在しているわけではなく、ただ在るのです。


フロー理論を提唱した心理学者チクセントミハイは、人は発見や創造的活動から満足や喜びを感じるようにプログラムされていると述べていますが、ルール、制約、秩序、同調へのプレッシャーを持たない自然の中に身を置くことで、私たちの中に大きな生態系の一部である感覚が呼び起こされるのかもしれません。そして自分を真に満たす行動へとつながり、それが長期的な幸せをもたらすのです。





あなたを真に満たす行動は何ですか?自然にもっと触れることで見えてくるかもしれません。


出典:

“Study reveals positive connection between nature experiences and happiness”

Chia-chen Chang, Gwyneth Jia Yi Cheng, Thi Phuong Le Nghiem, Xiao Ping Song, Rachel Rui Ying Oh, Daniel R. Richards, L. Roman Carrasco. Social media, nature, and life satisfaction: global evidence of the biophilia hypothesis. Scientific Reports, 2020; 10 (1) DOI: 10.1038/s41598-020-60902-w


“CREATIVITY AND THE NATURAL OUTDOORS” (Cordele Glass, Jan 2020)  https://positivepsychologynews.com/news/cordele-glass/2020012440097?fbclid=IwAR3gWl3fKDWsb5UB9Z7sQObyjGc7jXUNZBhtSsC1TG-m61sXdEJOvZySRAM





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